
「日本の外からの視点」で、 笠間の隠れた魅力を伝えたい。
築150年の古民家からはじまる
KASAMA HILLSプロジェクトとは。
ポール・ブラッドリーさん・大坂 珠江さん ご夫婦
ドバイやバリで、ホテル・リゾート開発などを数多く手がけてきたイギリス出身のポールさん。妻の珠江さんとの長年の海外生活を経て、2017年に日本へ移住。2023年より笠間で築150年以上の古民家に暮らしながら、夫婦でKASAMA HILLSと題したプロジェクトを立ち上げ、民泊・レストラン・カフェの運営、古民家再生などに向けて幅広く取り組んでいる。
笠間の暮らしを楽しんでいたら、自然とアイデアがあふれてきた
―おふたりが立ち上げたKASAMA HILLSプロジェクトについて教えてください。
ポールさん:私たち夫婦は、笠間のなかでも本戸(もとど)という地域に暮らしています。ここはすばらしい自然・資源に恵まれた場所で、私たちの暮らすこの古民家を中心に、地域の魅力を生かすような何かができないか、と色々取り組んでいます。たとえば、いまは離れに民泊施設を建設中で、他にも私たちが栽培する栗など地元の農作物が味わえるレストランやカフェの立ち上げに向けて、営業方法を模索しているところです。ポール・ブラッドリーさん
珠江さん:頭の中にはまだまだやりたいことがたくさん! とはいえ、もともと私たちはビジネスをするために笠間に移住したわけではないんです。きっかけは、この古民家との出会いでした。ここは名家のお屋敷だったようで、夫婦と犬1匹には広すぎるほどの豪邸なんです。最初は単に自分たちが暮らすために手を入れていたのですが、離れや蔵などまだ使えるものが多くて、それなら他の方にも楽しんでもらおうとアイデアが膨らんでいきました。
完成した離れの民泊施設
―たくさんのアイデアの実現に向けて動くなかで、プロジェクトとして目指す方向性も定まってきたそうですね。
ポールさん:はい、KASAMA HILLSが目指すのは、熱意のある個人やグループが「グッドライフ」を体験できる場所になること。そのために、この地域にある資源を活用しながら、ほんとうの意味で人が豊かに暮らす・過ごすための提案・事業を展開していきます。
大切にしたいのは、地域の宝である自然と共存するための持続可能な視点です。たとえば提供する食事は、輸送による環境負荷をかけない地産地消であること。生活インフラに関しても、できる限り井戸水や太陽光発電など自然の恵みを活用していきます。
とくに力を入れている取り組みのひとつが、この地域の「古民家再生」です。これも暮らし始めてわかったことですが、近隣にはわが家のような立派な古民家が他にもたくさんあるんです。これらを現代の暮らしに合うように私たちがデザインを施して改修し、移住希望者などへの販売を考えています。既に3軒の空き家を取得し、工事を進めているところです。
ポールさんと珠江さん
伝統的な日本の家は、世界的に見てもパーフェクト
―ポールさんは40年以上、ホテルやリゾート開発など新しい建物をつくるお仕事をされてきたとのこと。古民家に興味を持たれることについては、少し意外に感じました。
ポールさん:たしかに海外のプロジェクトでは新築の建物を手がけてきましたが、日本の古民家にはつながるものを感じています。というのも私が建築を考えるときにいつも大切にしてきたのは、「土地との交流」だからです。
どんな建物を手がける際も、緑や風、日差しを生かすなど、その土地をリスペクトし、その土地らしさを感じられる場づくりを意識してきました。とくに私が得意としてきたのが、木や石といったマテリアルを建物に取り入れること。だから自然素材を巧みに用い、四季とともに暮らす日本の伝統的な家は、まさに私の建物の考え方に合致するものなんです。
改装中の蔵で
珠江さん:そんな彼から見て魅力的な古民家が笠間にはまだまだ多くあって、「生かさないなんてもったいない」という想いが、私たちの古民家再生の原動力になっています。
ポールさん:伝統的な日本の家の建築はパーフェクトなんです。見た目に美しいことはもちろん、とても合理的につくられているから。とくに柱の高さや間取りなど、すべてが畳のサイズを基本に見事に計算されてつくられていて、メンテナンスしやすい点はすばらしい。たとえばこの引き戸は、じつは隣の建物のものを入れ替えて使っています。海外のドアはそれぞれ個別のものとしてつくられるので、こうしたことはできません。
母屋の梁
珠江さん:でもそんな素晴らしい古民家も、持ち主の方が高齢で管理ができないという理由などで放置されていることが多いんですよ。最近私たちが引き取らせていただいた空き家も、親御さんが所有する家の管理に困っていた娘さんからのご相談がきっかけでした。
年代を重ねた家であるほど、相続や手離すための法的な手続きも煩雑です。そのため司法書士を入れて適切な売買の手順を踏むなど、持ち主の方の負担を軽減させてあげるようなサポートを行うことも、古民家再生を手がける私たちの役目だと思っています。
東京や近郊からなど、笠間は移住者が多くて馴染みやすい
―以前は土浦でも古民家暮らしをしていたそうですね。笠間への移住はもともと珠江さんが前向きに考えていたとのことですが、どこに惹かれたのですか?
珠江さん:水戸にお友だちがいて、笠間の陶器市として有名な「陶炎祭(ひまつり)」などによく行っていたんです。文化的な雰囲気があって素敵なお店も多いし、暮らしやすそうな場所だなと思っていました。でも彼は「何となくヒッピーっぽいイメージがあって苦手」と言っていたので、移住は無理かなと思っていました(笑)。
―最初から乗り気というわけではなかったんですね。それでも移住したのはなぜですか?
ポールさん:最高の家に出会ったからです。土浦も静かで良い場所だったのですが、数年で色々な建物ができて景色が変わってしまって。もっと自然を感じられる場所を探して50軒ほど物件を探し回り、ようやく見つけたのがこの古民家です。目の前には栗林が広がり、おいしい井戸水も使えて、何と言っても歴史を刻んだ建物がすばらしい。見学して2時間で決めてしまいました。
母屋には薪ストーブのある土間がある
珠江さん:笠間に移って2年ほどですが、実際に住んでみて感じるのは人の良さです。新しく来た人をやさしく受け入れてくださるので、私たちもすぐ馴染むことができました。もともと地元にオープンな雰囲気があるのだと思いますが、東京など他から移り住んできた人たちも多くて、皆で良い街にしていこうという共通の思いも感じます。
ちなみに古民家再生に協力いただいている腕の良い地元の大工さん、空き家の情報もご近所の方から教えていただいたんですよ。私たちのプロジェクトは、まさに地域のつながりに支えられています。
ポールさん:笠間にはそうしたつながりがある一方、自然も、お店も、まだまだ良いものがたくさんあるのに、知る人ぞ知るものになっていて、外から来る方にあまり伝わっていないのはもったいないと感じています。笠間に来てからは「こんなに魅力的なものがあるんだから、もっと皆に知ってほしい!」と、アイデアがどんどん湧いてきて毎日忙しいです。
プロジェクトを一緒に盛り上げてくれる仲間を増やしたい
―これからのKASAMA HILLSプロジェクトについて教えてください
ポールさん:事業計画をもとに着々と準備を進めているところで、2025年のはじめには各施設の運営を見据えて株式会社化も行いました。民泊、レストラン、カフェはできる範囲で少しずつスタートし、2~3年で形にしていければと考えています。
レストランに関しては、知り合いのイタリアンシェフが興味を持ってくれるなど実現に向けて動き出しているのですが、まさにこのプロジェクトは私たちだけでは実現できるものではありません。いま必要なのは、プロジェクトを一緒に盛り上げてくれる仲間です。
珠江さん:現状は栗の栽培・収穫や、古民家の改修などもすべてふたりで行っているので、なかなか大変なんです。もし私たちの考えに賛同していただき、何かやってみたいという方がいらっしゃったら、ぜひお声がけいただけるとうれしいなと思っています。そのうちKASAMA HILLSが地域の新たな働く場になったり、リタイアされた方などが集まってゆるやかにつながれたりするコミュニティのハブになれたら素敵ですよね。
敷地にある栗畑
ポールさん:私たちが再生する古民家に興味があるという方も、ぜひ気軽にKASAMA HILLSのサイトを通じてお問い合わせいただきたいと思います。笠間市は移住支援制度も充実していますが、実際の暮らしに関する細かい情報については、移住者である私たちの経験をもとに色々とサポートできることがあると思っています。笠間はまだまだ大きなポテンシャルを秘めた土地です。ぜひ一緒に豊かな自然を味わう暮らしを楽しみましょう。
笠間ヒルズのキャラクター ヘッジホッグのレスター
笠間ヒルズのWEBサイト
Kasamahills.com